1991 石川県生まれ
2017 「第3回金沢・世界トリエンナーレ」金沢21世紀美術館/石川県
2018 金沢美術工芸大学大学院美術工芸研究科
工芸研究領域 漆芸分野 博士号取得
2020 「山といえば川」SKLO/石川県
2021 「(お)然らばライン-工芸論の動態-」Gallery O2/石川県
漆と出会ってしまっていまだ付き合い続けていることに理由はないのかもと思う。
そもそも、当然のように作品を作ったり見せたりしているが、どうしてそうなのか。
考え出すと、これまでしてきた全ての行為についても同じことが言えてしまいそうだ。理由は考えうる。たしかにこれだと思うときもある。だが私は、この根本的な理由のなさをなかったことにはしたくない。
作品を完成させた頃には、いくつかの来し方から ー 未練は残っているかもしれないが ー ひとつの道筋を選び取っている。
振り返るたびに来た道の形が変わっているような気がするのはなぜなのか。
心当たりはある。例えば漆が塗料として力を発揮するときにも、接着剤として働くときにも、そこには何か別の存在がある。
漆がずっと私にさせていることのひとつに、この別の存在を探すということがある。そのまま支持体になる素材であったり、形やテクスチャーを借りてくるものだったり。制作は、当初の計画にぴっちりと沿って進むのではなく、出会ったものたちに左右されている。もうひとつ。
古道具屋で手に入れたひび割れだらけのお椀を好きに直して使うのと同じように、完成してしばらくたった作品にもふたたび手を加えたりできるだろうという気持ちがある。実際にそうしたことはほとんどなかったとしてもだ。この先も、自分の関わる素材にどんどん考え方が形成されていくのだろうと思う。
山森 菜々恵
「の 来しかた」
木谷 洋 + 山森菜々恵 - 工芸・新たな美的価値を求めて -
現代工芸の新しいものを生み出さなければならないという強迫的なもの、テクスチャーや表層に追い回されることへ違和感や疑問を持った本作家二人の考究の展覧会。
木谷は過去続けてきた金工のしごとの手を止めて、工芸と人とのかかわりを主題に「道具と機能」を考える。
山森は漆の技法にそぐわない困難な原型を作り偶発するできごとに対して丹念に辛抱強く素材の可能性を探っている。