1955 東京生まれ
1978 Chelsea School of Art, London
1979-82 Goldsmith`s College of Art (BA)
1982-83 Central School of Art (post graduate)
1984-86 Royal Collerge of Art (MA)
ヨーロッパ各地、国内にて個展グループ展多数
英国ロンドン在住
二十歳に英国留学、以後も現在まで英国在住。
心象風景や意思を表す鋭いセンスは著名な歌人であった父、故片山貞美のDNAであり、その天真爛漫な創作は独自のスタイルで画家としてのエポックを刻んできた。
作家はキャンバスに油彩のほか、アルミ板に工業用ペイントであらわしたり、キャンバス上に紙やキッチンスポンジを用いてコラージュ作品を描く。
学生時代から慣れ親しんできた表現のひとつとして版画を多く制作してきている。さまざまな技法を用いる。
作家は二十歳の頃ひとりイギリスに移り住み絵画する人となった。
心象風景や意思を表す鋭いセンスは著名な歌人であった父、故片山貞美のDNAであり、その天真爛漫な創作は独自のスタイルで画家としてのエポックを刻んできた。
1990年代まではハードエッジの油彩を発表しており、その多くは丁寧に塗り重ねられた絵具の重々しいテクスチャーで強い幾何学的構図がキャンバス全体をおおっている。
2000年に入っていろいろな素材を用いた表現方法へと移行していく。金属板に工業エナメル、変型キャンバスにカラフルな雑誌の切り抜き、分割されたキッチンスポンジなどが色彩とかたちの集合体となり、うつくしい混沌が支持体にたち現れる。充実した環境の変化とともに作家自身と創作の関係がより深く密接になっていく時期でもある。
2013年の個展で15世紀フランドル派の作家ボッシュの「快楽の園」に感動を得たコラージュ作品を描いているが、これも作家にとってカオス(混沌)の絵画なのである。
今回のDM掲載写真の円をかたどりコラージュを試みた作品もはたして俯瞰する世界のカオスなのであろうか….
本展は作家の1990年代から現在までの絵画を展覧します。
画廊主
Yumi Katayama moved to England in her early twenties to pursue post-graduate art studies. She settled there to establish her career as an artist.
Katayama was deeply influenced by her late father, Teibi Katayama, an eminent tanka poet whose poetry informs the sensitivity and expressiveness of her imaginative landscapes. With her artless and inquiring style, her work developed its own voice and over time her extensive oeuvre maps out the development of her career as an artist.
Until the 1990s the artist produced hard-edge style paintings with heavy geometric patterns rendered in densely painted textures covering the canvas.
At the turn of the Millennium she began working with mixed materials, including metal panels, industrial enamels, colourful collages on odd shaped canvases, cut-up sponges, and so on. The multiplicity of materials, shapes and techniques assembled on the unusual matrices present themselves as a beautiful chaos.
The transition onto a different medium of expression resulted in a new depth of connection and creativity for Katayama.
In a private exhibition in 2013, the artist presented a collage inspired by The Garden of Earthly Delights by the Northern Renaissance artist Bosch, in which she depicted her interpretation of the chaos in this world. The image illustrated on cover of this invitation may also be a bird’s eye view of the chaos of this world.
Our exhibition presents a survey of Yumi Katayama’s works from 1990 to the present.
Yoko Ikeda (Director)
片山 弓 ―カオスの画家
片山弓の絵画には過去の絵画論による説明では収まりきれないところがある。絵はきわめて単純化された画面にさまざまな形態が入り組み絡まったようにみえる。絵は風を受けた窓が開いたり閉じたりするような、三次元の世界に跳びこみあるいは跳び出すかのように見えるのである。ある画面はどこまでも平行的な拡がりだし、別の画面は前からずっと離れた奥深いものを描こうとしている。ある絵は静物画を思わせるし、また次の絵はまるで風景画のようだ。しかしこうした色々な見方できるとしても彼女の作品は場当たり的で無作為にかかれたものではない。
片山の絵画の特質を考えるとき、まず科学との関連を記したい。というのも彼女の作品は現代科学が持つある確信と同じ位相にあると思われる。セザンヌは「自然はすべて円錐と球と立方体の三要素で成立する」と述べた。続いて20世紀のアーティストたちは、カオスそのものとして現れる現象について秩序だった概念の元に世界を根底的に把握しようとさまざまに試みた。キュビストたちは見る対象を視覚的全体性の元に復権させようと試みた。またモンドリアンは一歩進んで、事物が現前させている継承をもっと単純化された幾何学分析にまで還元させた。
しかしながら現代科学のカオス理論では彼らの分析方法とは逆行する方法が考えられている。そこでは仮説的秩序を想定するのではなく、カオス状態のまま把握しようとする。つまり秩序を想定せず偶然性、偶発性を充分に重視する。片山の描く絵画はこのカオス理論と通底する表現法といってよい。現象の沈澱化ではなく、むしろ衝突させること、構造を統一せず事象のひとつひとつを分離させたまま瞬間的現象そのものとして視覚化しようと試みる。
自分の網膜が捉えた関心ごとを発生状態のままで特定し、事象を正確に作品として定着させていく。言うならば、絵画としての「浮遊する現実の標本化」なのである。
彼女の制作の出発点は日常生活で何気なく垣間見たもの、身辺の出来事から始まる。目を刺激するようなものやドラマではなく静かな瞬間。それは家具や柱の上部にある縁取り、壁面と周りの空間をさえぎる境界線、射し込む光の模様、そそりたつ塔や建物がつくる影やその色調といったものだ。作家は選択したそれらのカオス的瞬間をキャンバスに激しく、強く刻みこんでいく。それが片山の絵画なのだ。
WALDEMAR JANUSZAK(ヴァルデマー・ヤヌシャック)
(美術評論家、TV美術番組制作者)
意訳:池田陽子